オリンピックに出場できるなんて夢にも思わなかったケガの後。
あれから一年半、とうとうその日がやって来た。
＜注意＞フリーの結果が下段に出ますので、知りたくない人はここでストップをお願いします。
右膝十字靱帯の損傷と言うニュースが流れてきたときには、オリンピックどころか、選手生命も終わったかと思いました。
その少し前に、同じくずっと観ていた熊川哲也さんが、膝のケガをして手術をし、ようやく復帰して喜んでいたら、直ぐにまた調子を崩してしまいました。それも、チケットを取っていた演目で、間際に調子が悪くなって代役が立てられていたのです。
あの熊川さんでさえ、あんなに厳しいリハビリを乗り越えてもやはり、膝の故障は持ち直さないのだと思ったので、高橋君のケガを聞いたときには、同じ道だと思ってしまいました。
熊川さんの手術のころは、私も、下手くそなタップダンスを強引に続けた結果、左膝の半月板を損傷してしまい、さらには軟骨まで削り取って、とうとう歩けなくなった時でした。
膝を壊したら、復帰できないと確信してしまった後です。
高橋君はまだ若いのに、あんなに大好きなスケートができなくなるなんて、気の毒で可哀想で、どんなに辛いだろうと思いやる以上に、活き活きとダイナミックな演技がもう観られなくなることの哀しさでとても辛かったのです。
そんな大けがにも関わらず、過酷なリハビリを続け、リンクに復帰したと知っても、もう４回転は無理だろうと思いました。
だけど、復帰第１弾だった横浜プリンスのショーで滑りを観たときには、本当にビックリしました。３回転も飛びました。体はまだぎこちなかったけれども、見慣れた人でなければ気付かない程、あの高橋君が素敵に舞っていました。
そしてオリンピック。
日本男子は３枠あるので、出場は当然だろうと思えました。競技を重ねる度に、もとの切れが戻ってきて、段々と氷と高橋君の境目がなくなって行き、とうとうオリンピック出場を決める競技での優勝。
私も、高橋君を見習って、左膝のためにできる限りのリハビリを行い、なんと走れるまで復帰しています。
もうタップダンスはできないけれど、普通に歩きゆっくりと少しなら走れて、何より、痛みを感じることは殆どありません。
目指せ高橋！ 私の膝も、高橋君のように努力をすれば、４回転はできなくても、人生の最後まで自分の足で歩いていけると思いました。
高橋君は、体の故障を体験したすべての人に、夢と可能性を示してくれました。
肉体は、オーラの結果です。
夢と可能性を見つめ、それに相応しい努力を続けた人は、希望通りの肉体を手にすることができるのです。
私はそれを、高橋君から教わりました。
いよいよ始まった男子フィギュア。ショートプログラムは、僅差の３位。
誰もが、手堅くトリプルで回避すれば、絶対に金メダルがとれると思ったことでしょう。
でも、高橋君は、挑戦を選び、無難にまとめる道を捨てました。そうしないと、自分が納得しないから・・と。
たとえそれで金が取れたとしても、嬉しくないと言い切りました。
今日のフィニッシュは、私が応援してきたこの４年間の、どの時よりも輝く笑顔になっていました。
４回転は失敗したけれど、高橋君の思うとおりの滑りができたと思います。
応援してきたすべてのファンが、これで良かったと思うことでしょう。
もし、４回転を回避し、確実な３回転で決めていれば、優勝したエバン・ライサチェクさんの得点を優に上回ったことだろう。そして、金は取れただろう・・・・、けど、あれで良かった。
何より、高橋君が泣いていた。
選手でいることが、とても嬉しかったのだと思える。
銅メダル！ おめでとう！！
そして、感動をありがとう。
感謝。
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